ピース



俺には何もない。
そんな言葉を言い飽きた。
空を掴む腕が腐る前に落とす。
そんな事が出来るはずないのに。

声を出してみた。
何もない空に向けて咽ぶ。
絶望の歌。
生まれたばかりの旋律がさわいだ。

知らない音色が響いた。
俺の声、俺の歌、誰かの音。
重なり、揺らぎ、回って。
空に飛び散ったのは音楽。

目を閉ざして二人きり。
空に舞った声を包む音。
世界が揺れて目眩がする。
音の洪水、迸る熱、放つ声。

体温が上昇する。

興奮が加速する。

得た事のない快感に包まれる。

それは紛れもない歓喜の歌。
俺の声、俺の歌、お前の音。
空に飛び散るのは二人の音楽。
それは紛れもない歓喜の歌。

およそ似合わない地に立って、それでも空に向かう。



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メルマガVol.156掲載(2007年2月6日発行)
「UNITE」とセット。

// written by K_